間伐のすすめ

これからのあるべき杉・桧林を考えること

皆様方の所有林のほとんどが杉や桧の人工林ですね。最近では、花粉症や保水能力低下、森林荒廃等で悪者にされる事が増えてきた杉や桧ですが、戦後の高度成長期を支え、薪炭材から建築用材等として様々な利用がされてきた木材、その後に国の政策から実施されてきた再造林、拡大造林、そこから現在のような森林となってきて、それをどう維持し、どのようなかたちで残していくか。どのような杉・桧林であるべきかを考えましょう。
杉や桧は植栽時には、1ha当たり3千本前後の植木がされていますが、その後の保育間伐等により、40年生時には約1,400~1,800本位になってきます。良く手入れされている森林は、国の補助制度を利用しながら搬出間伐することで森林所有者様に金銭的な還元も出来ています。

我慢する樹種である杉や桧

では、手入れされていない森林ではどのようなことが起こっているのでしょうか?
樹木には、陽樹と陰樹という分け方があります。陽樹とは生育に最低限必要な光合成量が比較的多いタイプの樹木のことです。陰樹とは光に対する要求性が比較的低い樹木のことです。面白いことですが杉と桧では性質が違い、杉は陽樹になり桧は陰樹となります。杉は陽樹ではありますが、耐陰性がある樹種です。

広葉樹に多いような陽樹でしたら弱い樹木は淘汰されながら、また陰樹が下層に生息することで森林形態バランスをとりながら森林が維持されるのですが、杉や桧の一成林では、密度により横への成長が出来なかったり、枝が枯れあがりながらも枯死しないように上部へ成長しようと頑張っています。
周りの木へ悪影響を与え、また下層木や下草の成長を阻害してしまうことで治山治水への影響も与えてしまいます。大根のように育ちたいんだけれど、牛蒡のように「我慢しながら成長しようとしてしまう樹種」なのです。

住みよい環境づくりは組合員の皆様の手に

下呂市の面積の90%以上が森林で、私たちの周りにある森林環境は、治山、治水、水源涵養、地球温暖化防止、木材資源の有効利用と様々な役割を果たし、住みよい環境作りに貢献しています。人の手をかけて間伐を進めることで私たちの生活環境をも改善されると考えます。私たち、森林組合は国の進める森林経営計画という林業政策で地域の協力を頂きながら搬出間伐を進めています。

木材の価格は低迷していますが、少しでも組合員の皆様に木材で所得をあげて頂けるよう努力して参りますので、ご理解、ご協力をお願い致します。

森林環境に思うこと

最近様々なメディアを通じて「SDGs」という言葉を耳にするようになりました。
SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された国際目標(Goals)ですが、17のゴール(目標)が示されています。
先進国や発展途上国では取り組む方法が異なりますが、 日本でも「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」の会合(2019年12月20日)で「SDGsアクションプラン2020」を決定しています。
岐阜県でも、森林・林業・木材産業において関連する目標について下記のようなことに取り組まれるとのことです。

森林・林業施策例

  • 水を育む・・・森林の整備による水源涵養機能の増進
  • 再生可能エネルギー・・・木質バイオマスエネルギーの利用促進
  • 山村での雇用の創出・・・森林技術者の確保・育成、林業事業体の労働環境の改善
  • 技術革新の基盤づくり・・・低コスト林業等の技術革新、木材の新たな用途開発
  • 住み続けられるまちづくり・・・山村地域の活性化、持続可能な森林経営の推進
  • 持続可能な生産・消費形態・・・県産材の利用促進、森林サービス産業の創出・育成
  • 気候変動の緩和・・・炭素の塊である木材の利用促進、循環型林業の推進
  • 海の豊かさ、陸の豊かさ・・・森林の保全と持続可能な森林経営

そこで、私たち南ひだ森林組合も「SDGs」「地域の森林環境」「森林所有者(組合員)」への貢献としてさまざまな取り組みを考えています。

まず1つ目は、下呂市内には、14,000ha余りの未整備森林(過去10年間に整備記録がない人工林)があり、これらの森林で森林経営計画を立て、搬出間伐や保育間伐を積極的に進めるため、森林技術職員や職員の新規採用と育成(令和2年度技術職員6名・職員1名採用)に努めていますが、全国的に進む林業従事者の減少から起こる未整備森林、放置林、放棄林への流れは、将来的に防ぎきれないと考えています。
公益性を考え未整備森林等を減らす事業推進のために、下呂市内で取り組むべきこととして、「地域森林の把握」森林所有者で構成される「森林造成組合」との協力と維持、「林業従事者確保」で競合する事業体であるが「地域の林業事業体」との協力と指導が必要です。
これらは、下呂市(行政)が進める「森林経営管理法」による未整備森林等の管理と「森林環境譲与税」の有効利用による実現が可能だと考えています。
南ひだ森林組合は、下呂市(行政)と協力してそれらの課題に取り組む事に尽力したいと考えています。

2つ目は、「持続可能な森林経営」と地球環境への貢献を考えた「無理のない更新伐」の実施です。
「持続可能な森林経営」では、森林所有者の皆様が森林を持つ意義と責任についてを考え事業に取り組みます。
意義として、木材価格が低迷した中でも森林資源を財産として後世にどう残せるかと共に、少しでも多くの収入が得られる搬出間伐事業の実施に取り組みます。
責任としては、地域の森林環境や生活環境への森林の役割を認識し、災害の起こりにくい森林づくりに努め事業を進めます。
「無理のない更新伐」については、下記で説明させていただく地球温暖化防止への貢献と「持続可能な森林経営」にもかかわる木材生産と木材の有効利用が林業が業としてなり得るために必要な事業として「無理のない更新伐」に取り組みます。
事業の実施方法として、「被害木林(虫害、獣害林等)と高齢林での皆伐事業」の提案を行います。
皆伐は、所有者の木材販売による所得確保と再植栽、成林過程での保育とその責任を森林組合が提案することで、納得して頂いて事業を実施します。

地球温暖化と森林の関係

地球温暖化は、大気中に存在する二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が上昇することが原因だと考えられていますが、温暖化を防ぐためには大気中への二酸化炭素放出を減らし、大気中から二酸化炭素を取り除く必要があります。
森林は、太陽からの光エネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素を有機物として固定するという重要な働きがあり、樹木は幹や枝などの形で大量の炭素を蓄えたり、製品としての木材を住宅や家具等に利用することで、木材中の炭素を長期間にわたって貯蔵することにができます。
木材は、鉄等の資材に比べて、製造や加工に要するエネルギーが少なく製造・加工時の二酸化炭素の排出量が抑制でき、木材のエネルギー利用は、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えない「カーボンニュートラル」な特性を有し、化石燃料の使用を抑制することができます。
森林は、光合成により二酸化炭素を吸収し酸素を放出する一方で、私たち人間と同じように生きていくための呼吸もしていているので、酸素を吸収し二酸化炭素を放出しています。ただし、光合成に使われる二酸化炭素量は呼吸から出る二酸化炭素量よりも多いので、差し引きすると樹木は二酸化炭素を吸収していることになります。成長期の若い森林では、樹木は二酸化炭素をどんどん吸収して大きくなります。これに対して、成熟した森林になると、吸収量に対する呼吸量がだんだん多くなり、差し引きの吸収能力は低下していきます。

※戦後の拡大造林推進施策に伴う現在の森林の状況は(スギやヒノキを中心とした人工林の林況)森林環境にとって健全であるとは考えられない部分はありますが、全国で起こっている皆伐後の放棄林、放置林の状況を当地域で発生させないことが大切であると考え、皆伐を実施してほしい森林所有者様や被害木林での今後の財産としての森林価値を提案する中で事業実施します。
※高齢林での無理のない皆伐、再造林による林齢の平準化は将来の森林環境に貢献することですが、皆伐後に再造林を実施してもそれまで高齢林の有していた炭素貯蔵量がすぐに回復するわけではありませんし、強度な皆伐の実施は林地災害を誘発する恐れもありますので、様々な観点から検証研究を進める中で事業に取り組みます。

スマート林業にむけて
~南ひだ森林組合における取り組み~

ドローン(小型無人機)

地形図や航空写真などではわからない「現在の山」をリアルタイムで知ることができます。
更に、撮影したデータを解析することで、本数や樹高等、現在の山を正確に把握することができ、より良い提案が可能となります。
また、災害時には林況確認に活用することで迅速かつ安全に調査が可能となります。

Geodo(GNSS測量器)

従来のGPSに比べ測位できる人工衛星の数が多いのため、高精度の測量が可能となった。
そのため、林内の障害物に左右されることなく測量が可能となります。
また、人員の省力化により、円滑な事業運営が見込まれます。

OWL(森林3次元計測システム)

レーザースキャナにより、林内の空間情報を3次元データとして取得でき、森林調査で求められる立木の成立本数や胸高直径などのデータが得られます。 また360°撮影を実施することで、入山の困難な所有者様に林内の現況を確認していただくことができ、組合員様により良いご提案ができます。

令和2年度林業デジタル化推進事業によって導入された上記の高性能機器を有効活用することで、省力化・精度統一・データの蓄積を目指します。 これからの座談会等での説明資料、より正確な森林調査による正確な提案、自然災害時の迅速な状況把握等に活かしていきます。 このように当組合では最新技術を活用した林業を実行していきます。